バリ島 ★ぶうげんびりあ (HTML版)


◆◆◆ 100 / ヌードの絵を飾ってゐる ◆◆◆

ヌードの絵を飾ってゐる

ヌードのデッサンが貯まってくると、『この絵をどうしよう』という悩みが生まれてくる。

毎週9ポーズ程度の絵が描かれ、ほとんどの絵は完成させられる。それだけでも、一年間では四百枚を超える数になる。

しかも、ヌードのデッサンは、コピー用紙に線画として描き直され、そのストックは膨大な数になっているからである。

とりあえず人体を描けるようになろうと、練習を続けているワケなのだが、よくよく考えると、ヌードの絵というのは、日本人に売るのは難しいんじゃないかと思えてくる。 

例えば、絵を売りたいと思ったら、最低でも服は着ていなければならないのではないか?服を着ていれば、喫茶店とか、飲食店とか、応接室とか、飾ってもらえる場所がグッと広がるからである。

しかし、ヌードの絵となると、それがどんなに素晴らしかったとしても、飾る場所は限定されてしまう。

居間に飾るワケにはいかないし、寝室がやっとかなあ。

そりゃ、あれっすよね。トレンディドラマみたいな部屋に住んでいるならね、まあ、ちょっとした絵があっても、オシャレーっと思うけどね、そんな所に住んでる人も、そんなにセンスのいい人も見たことはない。

日本に住んでいるという事は、和の空間から逃れられないということである。ああ、アタシが下町に住んでいるからそう思うのかなぁ?イヤ、田舎に行けば行くほど、和の家屋の比率が高くなっているはずなのだ。

ほとんどの人が、『和』の空間と共存しているに違いない。トレンディドラマは、視聴者が、現実逃避できる唯一の空間なのだ。

テレビの映像くらい、非現実的もしくは、憧れ的な家に住まわせたいという、製作者の意地もあると思う。

どちらにしても、日本のタタミの家には、ヌードの油絵は、マッチしない。

服を着ていたとしたって、日本人は、知らない人の肖像画を買ったりはしないだろう。なにせ、ミーハーなのだ。有名人の描いた絵とか、有名人の肖像画であれば、ファンの人は買うかもしれない。

全ての商品の評価が、ブランド物かとか、入賞作家か、そういう箔の上に成り立っているのである。

そういえば、ウチの父が、『ピカソの絵だと言って買ってきたハトの絵』があった。

幾らだったのか知らないが、当然にプリントだ(と思う)。額付きで四万円以上は払ったんじゃないかと思う。(ずいぶん昔の四万円っす。)

その絵を買ったのは、『別にこの絵が気に入ったわけではないが、ピカソが描いたというので買った。』という理由だった。しかも、ハトとはいいながら、カラスのようなその絵を、ウチの母は、部屋が暗くなると言って、嫌っていたのだった。当然に、家族は、その絵を『カラスの絵』と呼んでいた。

うーむ。父がピカソ好きだったなんて、一緒に生活していて、ミジンも感じた事はなかったよなあ。

オヤジよ、ピカソの絵を買うなら、もう少しピカソらしい絵を買ったらどうなんだい。

というふうに、日本人が絵を買う時には、画家が有名かどうかのほうが、その絵を飾りたいかどうかより大切なのである。

その次に、飾る場所を考えてから買うので、結局人物より無難な『風景』やら、『花の絵』を買うことになってしまうのだろう。

アタシは、世界中にあるピカソ美術館を訪れているのだが、『所有者はあの絵を、一体どこに飾っているのか』と、いつも考えてしまう。

狭い日本のマンションの玄関にはマッチしない事だけは確かである。

そういえば、ウチのお客さんで、社長室に、ピカソのヌードのポスターを二枚飾っている方がいたなあ。

『社長おぉっ。ポスター、もう、日に焼けて、色褪せてましたよぉぉっ。アタシのヌードの油絵どうっすか?色褪せしませんし、今なら無名なので、お安くしておきますけどぉ。』おほほほほ。そんな人、他には見たことが無い。

日本の絵画業界では、人物画は、風景や静物などよりも、評価が低いのだそうだ。

海外では、逆に、人物の評価が高いのだという。

理由はよく知らないが、人物画はヤッパシ、売れないからだろうなあ。ましてや、ヌードじゃなあ。

モチロン、日本にも、棟方志功や、竹久夢二のように、人物画が有名な画家もいる。しかし、彼らの絵は、油絵ではない。日本画や版画のサイズの方が日本建築には合っているからだろうか?

彼らの絵が普及したのは、版画にして量産したり、雑誌の表紙などに使われ、大衆に受け入れられ、知名度が上がったから、絵の価値も上がったのである。画家道にも、マーケティングは不可欠だ。

そんなこんなで、人物画を描き続けるというのは、後々の事を考えないわけにはいかない。

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