バリ島 ★ぶうげんびりあ (HTML版)


◆◆◆ 099 / モディリアーニの絵を真似てゐる ◆◆◆

モディリアーニの絵を真似てゐる

私が社会人になりたての頃、『週間グレートアーティスト』という雑誌が発売されていた。一部五百円のワリには薄っぺらな雑誌であったが、当時のアタシは、毎週買うのを楽しみにしていた。うーん、リッチ。

バリに来ることになり、友人の画家宅に、その週間誌を送ってあげた。日本に置いてはおけないし、処分するのには、愛着があったからだ。

バリで油絵を始めてから、名画をもう一度見直したいと思い立ち、友人宅から、その雑誌の印象派の画家の号ばかりを借りてくる。

そうすると、アタシは、『モディリアーニが好きだったのだ』と思い知ったのだった。

自分はピカソ好きだと信じていたのに、なんてこったい。部屋にはピカソの絵など、一枚も無かったのである。

モディリアーニを好きだと言った事も一度も無い。それなのに、モディリアーニの絵は四枚。ロートレックが二枚、セザンヌの絵が一枚。それも、人物画ばかりを飾っていたのだった。

なんとも不思議な事もある。自分の事は、自分が一番知っているつもりでも、『まだまだ、知らないことがあるのだなあ』と、自分自身に驚いたりもするのである。これだから人生というのは、素晴らしい。

今更ながら、その週刊誌を読み直す。『モディリアーニには、後継者はいない・・・』か。うーん。この程度の絵なら、描けるんじゃないかななどと思い始め、オットに相談する。

『ねえ、アタシさ、モディリアーニの後継者になろうと思うんだけど、どう思う?誰も後継者がいないらしいよ。』

するとオット。

『モディリアーニはやめて貰えませんかね?生前、一枚しか売れなかったんですよね。売れない画家を目指してどうするんですか?

同じ後継者になるなら、もうちっと、売れた画家にしてもらえませんかね?』

おおっ。なるほど。この絵は、こんなに素晴らしいのに、売れなかったのだ。死んでから絵が高値で売買されても仕方が無い。

生きている時には、画材に事欠き、カンバスの裏に、また違う絵を描いたり、彫刻の材料を道路工事現場から盗んだりしたらしい。

そんな貧乏をする位なら、帰国して、働いた方がマシである。

雑誌にはこうも書いてある。『この絵は、人物をよく描写しているが、嫌な面が出すぎてしまい、依頼者に、受け取りを拒否される。』なるほど。

完成した絵は、拒否されることもあるのか。

知らなかった。画家の生涯というのは、勉強になるねー。

そういえば、アタシが描く絵は、潜在意識に忠実で、人物ばかりなのである。この先、人物画で、生きていけるのだろうか?

とりあえず、モディリアーニの絵を真似て、一枚描いてみる。まあ、デッサンはこんなもんだろう。

しかし、『油絵のあの透明感は、一生出せそうもないな』と実力の差を思い知らされるのであった。

後継者への道は遠い。

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