バリ島 ★ぶうげんびりあ (HTML版)


◆◆◆ 091 / もう一つの画材店にも顔を売ってゐる ◆◆◆

もう一つの画材店にも顔を売ってゐる

古いカンバスに絵を描き切ってしまったアタシは、自分でカンバスを作ろうと考え、カンバス布を買ってくる。手持ちの額に、画布を貼り付け、絵を描いてみた。おおっ、布には、絵の具が大量に染み込んでしまうではないか・・・。

バリではペインティングオイルが高いので、絵の具で下塗りをしていたら、何千円もかかってしまう。『こんなに画家が多い村なのだ。カンバスの下塗りは、もっと安価に済む別の品物を使っているに違いない。』絵の学校に行った事がない私は、こういうときの基本的知識が不足しているので、専門家に聞く必要があった。

とりあえず、セニワティは何日も先だったので、画材店で聞いてみようと考える。

UBUDの画材店といえば、『セニワルナ』。この辺りでは一番大きな画材店だ。

店には女性店員さんが三人。ガラスのショーケースの奥に座り込んで、どうでもいい事を話すのに夢中のようだった。

ワタシが店内でキョロキョロとしていると、ノソノソと立ち上がり、探している品を聞いてくる。客が自力では見つけられない品数の多さだけはリッパである。

三人は三人ともアタシに何か買ってもらおうと、リクエストした品を、店のあちこちから、持ちきれないほど出してくるのであった。

『カンバスの下塗りには、「ジェッソ」を使うといい。』と店員さんは、教えてくれた。お値段は二キロの缶で、三十万ルピア(約四千円程度)もした。

モチロン、買えない額ではない。それでも、ちとお高いんじゃないかと考える。

そうすると、次の女の子は、既に下塗りしたカンバス布を持ち出して、『4万ルピアだ』と、別な品を勧めてくる。

4万ルピアで、大きなカンバス二枚分の長さである。

二キロ分も、下塗りが必要なほど油絵を描くかどうかも解らない段階で、そんなに投資をするべきか私は不安になってくる。ジェッソの使い方なども、店員さんに聞いたりして、のんびりと買い物をしていると、客は次々と入ってきた。

店員さんは、パニック状態となりながら、新しく来た客に取りかかる。最初は『多いな』と思った店員さんの数も、今では適正だと思ったりもしてしまう。UBUDには画家が沢山いるし、ちゃんとした画材店は、ここしか無いと言っても過言ではないのだ。女将めっ、儲けやがって。

インドネシアに、独占禁止法があるならば、まず、『セニワルナに行』けと言いたい位である。

内心そうは思っていても、バリ島では、顔を覚えてもらうと、商品が安く買えるようになってくるので、愛想笑いも欠かしてはならない。なるべく、好印象を与え、『沢山画材を買ってくれる可能性のある客』と思われなければならないのである。

結局アタシは、『下塗りをしたカンバス』というのを一回試すことに決めた。高い品を棚の奥から取り出して勧めてくれたイブは、ガックリする。

後日解った事であるが、バリ島の画家は、カンバスの下塗りには、ペンキとニスを使っているようだった。しかも、たった三百円位で大量に下塗りが出来るらしいのだ。

知らないというのは、高いものを買わされる危機もあるのだと、つくづく勉強させられる。

高いなと思った品は、とりあえず買わないことである。

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