バリ島 ★ぶうげんびりあ (HTML版)


◆◆◆ 065 / シロはもう来ない ◆◆◆

シロはもう来ない

『シロ』とは、隣に飼われていた犬のこと。

成犬でもらったと、お隣さんは話していた。日本人の飼い主が、帰国することになり、友人に託したのだと思う。

お隣には、猫が七匹もいるため、食事は、どうしても猫のエサを流用されがちのようだった。

ウチは、肉類を大量に料理することもあり、油や骨が沢山ゴミになる。

しかも、鶏肉屋のオババは、売れない鶏のアタマとか足などを、お土産にくれるので、猫が食べられない部分は、シロの担当ということに決まっていた。

シロは夜になると、我が家の番犬と化し、駐車場の前で、アタシがおやつを出すまで粘っている。最近流行りのワークシェアリングと言えなくもない。

あまり早い時間にあげてしまうと、さっさと帰ってしまい、番犬の役をなさないので、月が高く昇るまで番をしたのち、やっともらえるということが多かった。

お隣さんが帰国していた時に、シロの体調は悪化した。

アタシは、交通事故に遭って足を傷めたのかと思っていたのだが、ウイルス系の病気だったようだ。

お隣さんが日本に帰国したとは夢にも知らなかった我々は、シロをそのまま放置していたのだが、食い意地は、病気に打ち勝ち、彼は、足を引きずるように、やはり、毎晩、おやつを食べに来ていたのだった。

そして、お隣さんがバリ島に戻り、その件について話すと、ウイルスにやられた犬の病気は、もう治らないのだそうだ。

そういえば、UBUDの獣医に連れて行った犬が全部死んでしまうという話も聞いた事がある。ウイルス性の病気を蔓延させないために、獣医の判断で安楽死させてしまっているのかもしれない。

どちらにしたって、病気の犬は、バリ島では助からないということが、なんとなく解ってくる。

人間だって助かるとは限らない国なのだ。犬ごとき、助かるはずが無いではないか。

しかも、あちこちで子犬も沢山産まれているのである。犬は放し飼いだから、自然繁殖するのも当然といえば当然。新しい犬は、新しい使用人と同じ位、沢山いる国なのだ。

病気がだいぶ治ってきたと思われる頃、シロはもう来なくなってしまった。

別に、ウチの犬ということも無かったけど、大量の鳥の骨が皿に乗せられたまま雨ざらしになっているのを見ると、ちょっと悲しい。

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