バリ島 ★ぶうげんびりあ (HTML版)


◆◆◆ 058 / 鈴の音を鳴らして待っている ◆◆◆

鈴の音を鳴らして待っている

朝、アタシの一番の仕事といえば、愛猫に朝飯をだすことである。

彼女は、朝飯を食べるために生きてきたと言ってもいい。とりあえず、朝になると、食べ物をもらえると思っているようなのだ。

バリ島では、朝4時頃からニワトリが鳴き始め、犬も吠え始める。早朝の仕事に出かけるバイクの騒音も6時くらいから頻繁に聞こえてくる。彼女の胃袋も、空が明るくなってくる頃から、食べる準備を進めているようである。

彼女の寝る場所は、日によって変わるのだが、早朝にはテレビの上でスタンバイすることに決めている。

アタシが起きてくると、テレビの上からポンと飛び降りて、冷蔵庫の前で待つ。

ネコのエサは自家製なので、エサを作らねばならない日は、三日に一度ある。そんな日は、エサができるまでの間、一時間半近くも、アタシの回りと庭との間をウロウロと行ったり来たりしながら待っている。

朝ドラの時間には、アタシも調理の手を休め、コーヒーをすすりながら、テレビに集中する。そんなときには、わざと体を掻いて、鈴の音を鳴らして、注意を自分に向けさせようとする。目が合うと、すかさず『なぁ』と鳴く。食べ物をねだる時だけは、世界一カワイイ猫になる。

しかし、そんなカワイイ猫でいるのは、朝飯前の一瞬だけなのだった。

食事が終わると、そそくさと、皿の前を立ち去ってしまう。ぼんやりしていると、アタシの絵の上で爪を研いだり、クロゼットの中に入れろと、だだをこねたり、体をブラッシングしろとねだったりする。

無視していると、プイと外に出かけてしまい、何時間も戻らない。自分のナワバリを点検をしたり、ハトを見つけて、つかまえようとしているようである。

そして胃袋の朝飯が膨れてくる頃には、いつのまにか家に戻ってきており、すでに深い眠り落ちているのであった。

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