バリ島 ★ぶうげんびりあ (HTML版)


◆◆◆ 052 / セミの声 風が届けてくれた ◆◆◆

セミの声 風が届けてくれた

当たり前のようだが、バリ島にもセミはいる。毎日夏なので、毎日セミが鳴いているのかといえば、そんなこともない。

奴らは、奴らなりに、示し合わせて、繁殖効率を高めているようだ。八年も土中に埋まっているというのに、たった一週間しか出会うチャンスが無いのである。せめて、何らかの工夫をしないと、絶滅してしまうではないか。

そんなこんなで、いつもは気づかないのだが、突然セミの声が聞こえてくる日というのがある。

遠くから、音だけが風に乗って届いているようにも思える。

なるべく高い木の上の方に止まり、風の力を利用して、相手をゲットしようという戦略だ。

この点、バリでは、高い木には困らない。あとは、根性で上まで飛んでゆく能力が競争に打ち勝つポイントだ。

相手をモノにしようと思えば、努力も必要だというところも、人間と変わらない。

風が止まると、セミの声も止んでしまう。

風が無い日に鳴いても、声を運べないので、出会うチャンスが減ってしまうのだろう。

まるで、夜十一時になるとアクセス数が増える、出会い系サイトのチャットのようだなあ。

遺伝子は、セミにも人間にも平等に、出会いの本能を埋め込んでくれている。こうなると、人間もセミ並と言えなくも無い。

日も高くなってから洗濯機を回すと、ぼんやりしたセミは、洗濯機の音を、お友達の声と間違えて、慌てて鳴き出したりする。『オイオイっ』と思っていると、他のセミも鳴きはじめる。

どんなきっかけにせよ、恋に落ちてしまえば、あとは簡単だ。

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