バリ島 ★ぶうげんびりあ (HTML版)


◆◆◆ 042 / 革靴 出稼ぎ小僧のささやかな夢  ◆◆◆

革靴 出稼ぎ小僧のささやかな夢

バリ島で生活を始めたばかりの頃は、ほとんどのトラブルは、自分では修理出来なかったので、工事屋に頼まざるを得なかった。そうすると、スラバヤから出稼ぎに来ている小僧が、修理に来てくれるのだ。

小僧は、必ず『見習い君』とセットでやってくる。見習い君は、初めはビーサン、小僧は、靴を履いていることが多い。我が家に入るときは、靴と一緒に、靴下も脱ぐのがマナーのようである。(理由は謎)

『こんなに暑い国で、靴履くと、水虫になるわよ。ビーサンになさいな。』などと、小僧にアドバイスするのだが、奴らは、水虫のことを知りながら、靴にこだわっているようである。

二年も経つと、見習君も小僧に昇格し、『中古の靴をやっと買いました』という風体でやってくる。ボロボロの革靴は、手入れもせずに、酷使されているという感じだった。

大した給料でも無いのに、コツコツと預金して、半月分の給料を支払って、靴がやっと買えるのである。

スラバヤには、ろくに働かない親父と、学校に通わせている兄弟などがゴロゴロといて、仕送りをしながらも、靴はどうしても買わなければならない。

アタシなどは、バリに引っ越すときに、日本ではあんなに沢山あった靴のほとんどをゴミに捨てて、バリでは靴から開放される生活に甘んじているというのに、不必要と思われる靴を買うのがステータスという人たちもいる。

世の中は、不思議なものである。まあいい、幸せならば、それでいい。

とりあえず、奴らの修理を監視しながら、語学能力を高めるべく、雑談も欠かさない。工事の様子を見て、次回からは、自力で修理できるようになれるよう、細かい部分まで修理を見学する。奴らに出来て、アタシに出来ない修理は無い。日々精進です。

修理が終わると、ボスに電話を掛けて金額を確認。小僧に金を払い、自前の領収書にサインさせる。

最後に、クロゼットから、おまけの靴磨きを出してきて、やっと靴を買った小僧に一個あげる。

ウチには靴がないから、靴磨きは必要ないのである。

しかしながら、日々、労働に明け暮れて、ボロボロの靴を長持ちさせてくれる靴磨きは、小僧には、かなり嬉しいようである。

ビーサンの見習君は、羨ましそうに、靴磨きの缶を見つめている。いつか『靴』を買ったら、『アタシから、靴磨き缶をもらおう』と、密かに思っているに違いない目である。

そして、アタシは、しつこく、『水虫になるから、靴なんて買っちゃダメヨ。』と、見習君に一声掛けて、帰ってもらうのであった。

ご参考までに、出稼ぎ小僧が靴の次に買うのは、『革ジャン』っす。靴を作る時などにでるハンパの革をツギハギにして作るタイプ(イラスト左上)と、日本で売っているような、『普通の革ジャン』があるのだが、小僧の給料は激安なので、通常は、『ツギハギ革ジャン』が目標となっているようだ。

普通の革ジャンなんか着ていたら、もう、羨望の的っすね。『いくらだった?』とか、『どこで買ったのか?』とか、イロイロと聞かれてしまうのだ。

『革ジャンって、バリじゃ、暑いんじゃないんですか?』

ええ、暑いです。ああ、でも『スラバヤ』までバイクで帰る時にはアリでしょう。人生、我慢の連続っす。

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