バリ島 ★ぶうげんびりあ (HTML版)


◆◆◆ 034 / 閉まったままの店がポっと開いていた ◆◆◆

閉まったままの店がポっと開いていた

ウチの大家さんが、ジャワ人に貸した、小さい店がある。

ジャワ人の夫婦は、ジョグジャカルタから、バリ島に布を運び、ホテルや土産物店などに卸して生計を立てている。

赤いレンガ屋根の小さな店は、賃貸を始めてから、もう、一年半程経つというのに、長い事閉まったままであった。

大家さんに、家賃を払ったのか聞くと、半年分の家賃が未払いのままなのだそうだ。

まあいい、人の店なので、家賃が未納でも構わない。

アタシ的には、そんな話を聞くと、サラリーマン時代、不動産の仕事をしていて、家賃の入金チェックやら、未納のテナントさんへの入金日の確認作業など、嫌な仕事のことばかり思い出す。

ジョグジャの店が、久しぶりに開いていたので、店の主と話をする。

『店はずっと閉まったままだけど、この先どうするの?』

夫婦は揃って、

『モチロン、ここを拠点として、もっと店を拡張したいと思っている。』

などと、壮大な野望を語り始める。

『でも、ここだけの話だけど、バリ人は、宗教儀式が多く、休みばかり取るので、雇いたくない』のだそうだ。

バリ人に限らず、ジャワ人であっても金銭を任せると、ピンハネされるんじゃないかという不信感が根強く、人を雇い、店を任せられないという、裏の事情もあるのである。

家賃を6ヶ月も滞納しているという夫婦に、『スタッフがピンハネする話』を真顔でされると、笑うしか無い気持ちでイッパイになる。

ジャワとバリは、同じインドネシア人といっても、宗教も民族も違う。

アタシの見た感じでは、お互いに信用することはなく、受け入れるということもない。

ジャワ人は、我々外国人と同じように、『タム(客)』と呼ばれ、バリ人は、タムから、一ルピアでも多く引き出そうと知恵を絞る。

ジャワ人はジャワ人で、人のいいバリ人につけこんで、催促されなければ、ビタ一文払わない決意で店を借りる。

挙句の果てには、『この商品が全部売れないと払えない。』

などと、店も開けていないのに、自分の営業努力の怠慢を棚に上げて、金も払わずにキッパリと、店を利用し続けるのである。

しかしながら、大家さんも、大家さんである。

ジョグジャカルタの自宅の連絡先も聞かずに店を貸したので、家賃が滞納していても、催促も出来ない状態なのだ。

前にもそういうことがあったんだし、契約は毎年交わして、家賃の催促も、仕事と割り切って、定期的に行うべきなのである。

するべきことをしないで、愚痴ばかりこぼしている大家さんには、店を貸す資質が無いのである。

アタシ的には、この勝負は、ジャワ人の勝ちだと思う。

そして、こんなに客のいない場所(=次の借り手がいない場所)で店を開いた大家さんの、完全なる敗北である。

アタシは、今まで『生地屋のオヤジは、どうして店を開けないのか?』と、ずっと気になっていたのだが、人間不信からくる安全策を取ると、店は閉めたままになるということが判明。

長い間の謎がやっと解け、気分は爽快だ。

店の主の子供が1歳半になり、やり手の奥さんも、『バリに家も借りて、本格的に営業を開始したい。』

と話していたので、再来年位には、恒常的に店を開ける事になるんじゃないかと期待している。

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