バリ島 ★ぶうげんびりあ (HTML版)


◆◆◆ 031 / 雨の日に子が届けてくれたよ ◆◆◆

雨の日に子が届けてくれたよ

私の村には、郵便が配達されない。

郵便はどこに届くのかといえば、村の集会場にある共同ポストに届くのである。

封書という封書は、開かれて、中の郵便物がはみ出たり、金が入っていないかと探されたりもする。

ウチの母が出した郵便は、とうとう届かなかった。

とりあえず、そういう村に住んでしまったのだ。文句を言っても仕方が無い。パソコンがあるので、別に郵便を受け取る必要も無い。P.O.ボックスは、高い金を積まないと買えないこともあって、郵便物は送らないでくれと頼んでいる。

それでも、テレビのプログラムや電話の領収書などが、一ヶ月に一回位の割合で、ポストに届いてしまうことがある。アメリカで、郵便物に炭素菌が撒かれた事件をキッカケに、ポストに触るのが嫌で、私も長期にチェックにいかないままにしていた。

そんなある日の事、ガキが、外で騒いでいる・・・と思ったら、アタシの名前を呼んでいたようだ。『イブリカァァァ』と叫ばれていたので、自分だとは思わないで、長時間、ガキ共を放置してしまう。

慌てて、用件を尋ねると、郵便を持ってきてくれたのだった。

降り始めた雨でずぶ濡れになってしまったので、申し訳なく思い、お菓子を一個ずつあげる。(頂いた品だが、アタシは、甘いものを食べないので、大量に残っていた奴。)

アタシ的には、集会場まで行って、汚い郵便物の束から、自分の郵便を探すのは面倒だと思っていたので、まあ、いらないお菓子だし、減らす為にもあげてしまおう程度の気持ちだったのだ。

しかし、ガキ共は、お菓子がもらえたのは、『雨が降っていたのに、郵便を持っていったからだ』と考えたようだった。

次の郵便の配達は、土砂降りの雨を待って、兄弟で郵便物を持ってきてくれる。

『何も、雨の日に来なくたって、お菓子位あげるのにな・・・。』

と、申し訳ない気持ちでイッパイになるのだが、『雨の日に来なくても、お菓子はあげるよ。』というのがうまく言えないまま、彼らはまたお菓子をもらって、帰って行ったのだった。

その後ガキ共は、家でお菓子を食べているところを親に見つかり、怒られたに違いない。

ウチには子供を入れないようにと、厳しく頼んであるからだ。

子供を家に入れない理由というのは、いくつもある。

まず、来られても、ウチらに、メリットが一つもないからである。

奴らは暇なので、いい顔をすると、毎日来て、家の中を覗いては、帰っていく。

自転車の練習をウチのバトミントンのコートでする。

ゴミは散らかす。

うるさい音を出して騒ぐ。

例えば、アタシが何かを紛失したとしよう。自分で無くしたにも関わらず、子供たちを疑ってしまうに違いない。

そんなこんなで、来ない方がお互いの為なのだ。

今では郵便物は、庭掃除のオジジ様の担当になったようで、ときどき持ってきてくれる。

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