◆◆◆ 1394 ★ お茶の先生がやってくる ◆◆◆

2009.9.1 更新

イラストのコンペの展覧会の最中、みかけぬ女性が画廊に入って来る。

彼女が店の前を通りかかったとき、アタシは、店を開店する最中だった。

オジャラ「ネズミ、踏まないように気をつけてくださいね。今日は二匹も死んでるわ」

路地裏のハンター『トの字』の収穫結果である。

女性「あら、こんなところに、ギャラリーが」

オジャラ「よかった見て行って下さいな。今回は、販売してませんので」

女性「それじゃ、おじゃまします」

ギャラリーの中は、これから掃除をするところだったので、信じられないぐらい散らかっていた。のだが、彼女は、時間があるのか、のんびりとしている。

あれこれと話しているうちに、彼女が、お茶の先生であるということが解る。

正確には、カルチャーセンターなどを30箇所ぐらい運営していたこともあるのだそうだ。今は、(年をとったため)引退し、もう少し縮小したらしい。

書道の先生に引き続き、お茶の先生も勝手にやってくるというのが、ギャラリーの凄いところだよね。

しかも、アタシというのは、全くズズしい性格なのだ。

オジャラ「マジっすか。オチャのセンセイって、何流っすか?」

彼女は、茶人と書かれた名刺を差し出して、

女性『表なの。』

オジャラ「アタシ、表の人ってはじめてみました。ヨカッタら、お茶、点ててもらえませんか?」

表千家『道具とかは?』

オジャラ「ああ、アタシが作ったヘタクソな茶椀ですけど、茶筅もあります」

茶筅、茶さじを渡し、鉄瓶でお湯を沸かす。

IH茶人だからね。熱源は当然IH。

鉄瓶の取っ手が壊れているし、熱くて危ないので、どうしようかとおろおろしていたら、

表千家「何か、別なものに移せばいいのよ」

とおっしゃるので、紅茶用のガラスのポットにお湯を移す。

そうして、彼女は、缶から、粉を2杯取り出して、そうして、お湯を注ぎ、茶筅で混ぜる。

表千家「表はね、あまり泡立てないで、半分ぐらい、泡がない部分を作るの」

オジャラ「おおっ。そうなんですか。アタシが知っているのは、超アワアワで、ふんわりしている感じ。

飲み終わってもアワアワって聞いたことありますけど、まだそこまでは、泡立たないです。」

表千家「どこの流派かしらね。素人は、泡立てたがるのよね。笑。普通は、(裏であっても)そんなには泡立てないと思うけど。どこか、別な流派なのかしらね」

という会話。

何でも、茶道発展のため、表・裏・武者小路千家の三つに分割し、それぞれの世界を育ててきたのだという。そうして、そういう流派とは別に、茶人が、それぞれ自分の流派を立てるということもあるのだとか。

オジャラ「ふーん。自分で流派を作っちゃうんですね。なんか、自由でいいっすね。」

アタシは、骨董のムックで見かけた、半月型に泡が出るように茶を点てる流派のことを思い出した。

カエル型に泡が残るように点てる流派を作ろうかしら。汗。

それから、飲み方や、口をつけたところを指で拭いたり、茶椀を回したりするやり方を伺う。

オジャラ「なるほどぉ。」

センセイが勝手に来てくれて、茶を点ててくれるというのは、なんか、得した気分だよね。

表千家「14歳のときから、茶を習いはじめ、お茶のセンセイになるために、高い道具を、コツコツと集めてきたのよ」

と話してくださる。

そうして、アタシが作った茶碗について、

オジャラ「ここは、アタシの庵ですからね、アタシが作った品でおもてなしするほうが、皆喜ぶし、話も盛り上がるので、アタシは、これでいいと思ってます。(高い道具を買う)お金もないし。」

表千家「お茶って、本来、(特に飾り立てるということでもなく、あるもので済ませる)こういうものよ」

と、なんか、妙に納得されて、

そうして、次の日、アタシにゲタを届けてくれたのだった。

表千家「おばあちゃんのゲタなんだけどね。」

桐の新品の下駄だったが、古いので、少し汚れた部分がある品だった。

アタシは、その日も、前の日も着物を着ていたのだが、ゲタの鼻緒がボロボロだったからね。

オジャラ「何も、次の日に届けて下さらなくても、お忙しかったでしょうに」

表千家「約束というのは、相手も待っていることだから、時間のあるときに済ませておかないとね」

成功した人というのは、何につけても潔いものなのだと思い、勉強させられた。

オジャラ「頂いても、私にはできることがありません。」

表千家「いいのよ。アナタが気に入ったので。」

彼女は、アタシの着付けなども念入りにチェックし、そうして、また、街中に出てゆくのであった。

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