◆◆◆ 1355 ★ 清宮質文(せいみや・なおぶみ 1917〜1991) ◆◆◆

 

2009.6.26 更新

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もう、何度かにわけて、ゆっくりという濃さ。

それぐらい、見るのが辛い版画でもある。

この前銀座に出たときに、昭和通り沿いのギャラリーを流す。

おおっ。永井画廊って、こんなところにあったんだっけ?

早速入ってみる。

おおっ。

長谷川潔展だわぁ。

中に入ると、だいたい70万円から100万円台の、長谷川潔でございますという版画が並んでいる。

この前横美で見たのとは少し違うけど、ま、ホンモノには間違いがない。

銅版画の場合。というか、一流の作家さんの場合、素人にでも、その人がつくったかどうかが見分けられるほど、顕著なオリジナリティーがあるものなのだ。

それがなければ、一流にはなれない。

長谷川潔は、フランスでずっと作品を作り、とうとう日本に帰ってこなかった版画家だ。

最初には、メゾチントがあり、真ん中辺から線が中心の版画になる。

エッチングかとおもったが、ビュランと説明が書いてあったのでエングレービングだと思う。

人物が一枚あり、さすがに上手い。

この人物の一枚がなければ、ふーん。と通り過ぎてしまうところよ。おほほほほ。

それぐらい、人物の素描というのは、誤魔化しがきかない世界で、一枚を見れば、その人が、どのくらい鍛錬を積んだのかが解るのだ。

銅版にその線が刻まれる。しかも、ビュランでとなれば、アタシには、その技巧の高さや、絵の上手さの極まり方なども理解できるのだ。(自分でも作っているからね)

そのあと、入り口の壁面に掛けてあったメゾチントに見入る。

あっ、これ、有名な版画だわ。(他のは、見たこと無いのに、これだけ有名って、さすが、有名画廊)

と思ったら、没後、2007年に、作品の整理委員会なるものが設けられ、まだサインの入っていない作品をスタンプサインして、クオリティの高いものは、市場に流すような方向でまとまったのだと書いてある。

作者の没後、遺族などの了承を得て、スタンプサインをされた版画のことは、エスタンプと呼んでいて、直筆サインと比較すると、10分の一ぐらいが相場だと思っていた。

うっひょー。

エスタンプなのに、直筆と同じ値段なんだ。

まあ、あの有名版画は、確かに希少だと思う。

長谷川が、昔のメゾチントの技法を、独自に研究し、復刻した最初の版画だからである。

気持ち的には、本人が刷った作品であれば、サインがあろうがなかろうが、同じ値段というのも筋が通っている。

出所もチャントしていればね。

ふぅ。

個人的に言わせてもらえば、版画の刷りには、プロの刷り師というのも存在する。

彼らが刷ったのであれば、本人以上ということもある。

画廊としては、知名度の高い作家さんの作品で、筋のいい品は高値で売買できるので、多少の脚色をしたい気持ちにもなる。

一番困った部分は、鑑賞者には、その辺の鑑識が難しいというところだと思う。

銅板は、ちゃんと保存をしておけば、何年先であっても、ある程度のクオリティーで刷りもできるはずだしね。

別に、長谷川潔のエスタンプが、別人による刷り増しだと言っているのではない。素人には見分けがつかないだろうと言っているだけである。

あるとすれば、紙片をちぎり、紙の酸化具合から、何時時代に刷られたかを勘案する程度しか方法はのこされていないし、100年前の紙のストックだって、無いとは限らない。

だから、版画家は、生前、版は全部壊してしななければならないのである。

人間だから、壊したりできないんだよね。

創作者だからね、自分の作品をね。

リトグラフやシルクスクリーンは、版の保管ができないから、そういう心配もないし、そのとき、一気にある程度のクオリティーの作品を刷り上げるのが通常なんだけどね。

木版と、銅版に関しては、有名になればなるほど、没後の作品などの行方も気になるところである。

そういう理由から、価格が上がりにくいのかなあ。

浜口陽三のさくらんぼやスイカの作品も、似たようなのが大量にあるのに、どれも100万円とかで売られているからね。(18万円もある。)

ま、アタシは、浜口のフルーツは買うことはないかもしれないけど、長谷川潔の人物(女性像)ならいつかは、一枚は欲しい。

美少女のコレクターだからね。

その後、昭和通りのいくつかの画廊を冷やかし、日本橋の村上画廊にたどり着く。

おじゃら画廊

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