◆◆◆ 852 ★ 中学生の職場体験 ◆◆◆

2007.2.15

今年も、職場体験の日が来てしまう。

去年は、結構掃除をしたと思うのだが、今年は、折角掃除をしたスペースに、看板の板とか、その他の荷物が到着してしまい、アタシは、キッチンに行くのにも、大変な運動を強いられる結果になった。

中学生の方は、どちらも美術部で、絵は上手かった。

マンガチックな絵という意味では、まあ仕方が無い。

アタシは、アタシの絵も少し出して、あとは、草間ヤヨイとか、ピカソとか、ジョアン・ミロなんかの画集を見せてあげる。

彼女達は、エッシャーとか、草間の図録に素直に感動していたのが印象的だった。

「プロの絵っていうのはさ、【スゴイ】とか、【うまっ】とか、【見たことが無い】とかね、少なくともどれかがないとね、売れたりはしない世界なのよ。」

という話。

この作品を見せられた彼女達への、アタシのコメント。

「どうしてこれが芸術だか解らないでしょ?これを作った人(オシオッサさん)はね、あなた達が、どうしてこれが芸術だか解らないって所を目指して作品を作っているのよ。

アートというのは、謎々みたいなものなの。

だからね、アナタが、「これが芸術だとは解らない」と思った瞬間に、彼女の目的は達成されており、アナタ達はマケなのよ。

質疑応答などは、たいしてないので、用件が済むと、何か作品作りをしようということになる。

生徒さんのうちの1人が「芸術的な作品を描きたいです」

などというものだから、事態は急変する。

オ「芸術って、何だと思う?」

左の、オシオッサさんの新作「文房堂・シルバーホワイト」を見せられながら、彼女達は、言葉を失う。

ま、評価している側が、「芸術」と称しているモノの、要点だけ言うと、「瞬間表現(感動・内情表現も含む)、絵が動いているかに重点を置いて買う人は多いわね。」あとは、今まで誰もやったことのない作品を作った人というのは、ポイント高いわ。」

職場体験なのだから、仕事が収益につながるかという話は重要である。

ピカソの絵なんかを見せながら、どうしてこの絵が芸術と言われているのかを軽く説明。「まだ、誰もやったことのない(絵を壊し続けるという)作品を作ったことが評価されているのよね。この絵に慣れてくると、ありきたりな絵って、もう、つまらなく感じちゃうの。」

「ま、動きが足りないと思ったら、空中に魚を描くというのはオススメね。

あとはさ、頭の上から植物とか、口から犬が飛び出てくるとかいうのは、結構カンタンに作れて、出来もそれほど悪くないわよ」

などと、メチャクチャな説明をするが、中学生達は「なるほど」という顔をし、これから描く予定の絵の下絵を作るのであった。

オ「嫌さー、別に、結婚を勧める会ってことでもないけどね、イラストレーターで女の人は、自分の仕事を辞めて、結婚してから、イラストレーターとして大きくなってゆく人は多いよね。男の人は、ヨッポど絵が上手いとか、キャラクターデザインができるとかいう人じゃないと、食えてないと思う。」

などという話。

結婚しないまでも、どなたかと一緒に住むことで生活費の負担は半分になる。

そうすると、自由にやれることも増えてくると思う。

そういう話である。

アタシだって、結婚していなければ、これほど金も貯まらなかったし、今のように使えるということもない。

日本は生活費が物凄い高い国なのである。

外国から日本に出稼ぎをしにきている人たちも、その値段の高さにビックリする。

給料が高くても、生活にかかる金もそれなりに出てゆくので、結局儲かったりはしないのだ。

芸術的な絵を描くというテーマに基づいて描いた作品。アクリル画。1時間。

アタシは、天井画を描く予定の画布2枚の中央を、ガムテープでつなげたかったので、彼女達に手伝ってもらう。

それから、皆で絵を描いて(アタシは一時間ほどで完成)、時間になったので、皆さん、学校に戻っていった。

アタシは、「絵を描く時に、色をキレイな状態で仕上げるということに心を配っている。最初から強い色でアタリをつけると、強い色を薄い色が引きずって、画面が汚くなるから、明るい色から順番に、濃い色を乗せてゆけ。」

「絵は、面と面で構成するのか、その面と面の間を線で区切るのかのどちらかの技法で作られている。

だから、どちらにするのかを決めて、線を入れる場合でも、面を先に完成させて、面と面を区切る線は最後に加えろ。」

などという、ちょっとしたアドヴァイスをする。

彼女達は素直にその指示に従い、あっという間に絵を仕上げてゆく。

短時間に絵を作るという技術、絵が汚くならないで仕上げられるというのは、本当に重要だと思う。

絵の具というのは、そのままの色で十分にキレイなものなので、それ以上の美しさは必要ないからである。

彼女達は、自分の納得がいくまで描きこんで絵を完成させ、帰っていった。

「表現というのは、自由なものなの。自分の好きなように作ればいいのよ。誰も教えてくれたりはしないの。

あとやることはね、「自分がこうしたい」という作品を完成させるのに、不足している技術をアップさせる。これだけよね。

アナタの場合、この絵は、もっとこうしたいというのがあったと思うの。中学生なんだから、ヘタなのは仕方ない。

どんどんと描いて、これから、巧くなればいいの。例えばね、この紫をもっと鮮やかに塗りたいとかね(色作りに失敗していた。)、蝶の模様を細かく書きこみたいとかね。

そういう、思い描いていた作品にまで、不足している表現の技術をアップさせてゆく。そういうことも大事なのよ。

でもね、一番大切なのは、どういう絵にしたいのかという強い気持ちがあるかないかなの。

表現したいモノがなければ、その絵が完成することも、技術が向上することもないからね。」

彼女達は、ぼんやりと、聞いているのか、聞いていないのかも解らない反応だったけど、絵の仕上がり具合から見ると、アタシが途中で話したいくつかのエッセンスは既に作品に取り込まれていたのに驚いた。魚まで、、、。汗。

彼女達からは、「素直に人の意見を聞き入れられるという純粋さ」をアタシは学んだと思う。

絵を描いたり見たりしていると、どうしても独りよがりの作品になってしまい昔には戻れないことになかなか気づけない。

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