◆◆◆ 702 ★ 作家のパフォーマンス ◆◆◆

2006.5.18

フジタの作品展を見た後、工芸展に流れる。

新鋭の人形作家さんなどの収蔵作品が増えていて楽しめた。近代美術館だけが、生きている作家を扱ってくれる。

そうして、近代美術館に収蔵されている作品だけが、世に出てゆく。

最近は、そのことに気づいてきた。

常設展を見ていた人は、「あら、有名な人の作品ばかりなのね」

などと話していたが、実は、その逆の構造だということである。美術館収蔵作家ということになると、どこかしら芸術作品に違いないと思い込んだ人が、どんどんと取り上げて、露出が増えたことにより、知名度が上がってくる。

まあ、そういうムードだよなあ。

近代美術館の果たす役割は大きく、ここに来たときだけ、私は、日本でも生きていかれるような気持ちになるのである。

工芸館の帰り、近代美術館前で、草間弥生センセイをみかける。

フジタの作品展を40分待ちで見たとも思えないので、きっと、新しい展覧会の打ち合わせでもされたのだと思う。

例の、黄色い色に、かぼちゃのドットが印刷された布で作られたドレスを着ていらっしゃったので、間違いないと思う。雑誌の表紙などのように、濃い化粧をしたりしていなかったが、素肌は美しく驚いた。

私は、ペコリと挨拶してしまう。

私にとっては、ごく近いところにいらっしゃって、挨拶するのが普通である。

彼女は、自分を支えてくれているお付の人に、「誰?」と聞いていた。笑。

ダリの番組、フジタの展覧会、草間先生を拝見すると、作家のパフォーマンスについても考えさせられる。

彼等は、奇抜な服装や、メーク、髪型なども含めて、自分の知名度を上げる活動を行ったということになる。

クサマなども、現代アートの展覧会で、裸で踊り狂ったり、人の裸に、丸いシールを貼り付けていったりというパフォーマンスをした映像を残している。

そういう、異常性が、大衆の好奇心と一致し、認知を高めていったということには間違いが無い。

画家とか芸術家というのは、絵を描くだけで良いということでもないということである。

ピカソは、ドロドロの女関係のスキャンダラスな私生活を逆手に取り、毎朝、家の前に日参するテレビレポーターに、今日の一言のようなものをしていたという話も聞いたことがある。

絵とは関係の無い認知の向上という活動があるということになる。

日本の場合、それは、著書などに代表され、イケダマスオとか、その外の認知の高い作家さんの作品というのは、間違いなく、書籍を通して知名度を上げてきた。

そういえば、この前、アマゾンをアメリカから輸入して、日本で立ち上げたという方の講演を聞いた。

今は、フジサンという雑誌販売のサイトを運営する会社の社長さんである。

日本の書籍会社は、とりあえず、何が売れるか解らないので、大ヒットになるかもしれない大量の本をむやみに出版するという傾向になってきてしまい、ほとんどが採算割れという実態なのだそうだ。

まあ、その辺りは理解できる。

本というのは、出せば良いというものではない。

雑誌にしてみたって、4割位は平均して返品されてしまう。

完売するということがないのだそうだ。

定期購読するというよりは、テーマによっては爆発的に売れるという傾向で、売れ行き数が未知なので、印刷数を減らすということもできないらしい。かといって、売れすぎたからといって、刷りますということもない。

売れた原因が、あるスキャンダラスな話の詳細を読むためという、全くレベルの低い話だということもよくある。

藤田は、絵画は、美術館だけでなく、大衆に見てもらうことも必要だと、デパートの壁画や、建物などにもイロイロと描いた時期があったらしい。

彼は、それを大衆奉仕と呼んでいた。

奉仕なのだから、きっと、お安く請け負ったということなのだと思う。

でも、逆に、一般への露出が増えたことにより、知名度が物凄く上がり、小さい作品が売れたということもあると思う。

優れた作品というのは、大衆であっても容易に理解でき、お金がある人、もしくは、芸術を育ててゆきたいという気持ちのある人は、その作家の可能性を買い支えてくれるものである。

そういう人に出会うために、どう、自分の才能を世に露出し理解してもらうのか。

そういう活動もしなくてはならないということなのだろう。

アタシは、フジタの作品が、イロイロな画廊で売られているということにもホントウに驚くのである。

一体どうやって、あんなに沢山の作品が市場に流通するようになったのか?

彼についてはもっと研究したいと思う。

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