◆◆◆ 699 ★ ダビット(ナポレオン肖像画)・ダリとガラ ◆◆◆

2006.5.18

テレビ番組を見る。

今日は、フランスの宮廷画家だったダビットの番組。

時代背景としては、絶対王政の崩壊を恐れたルイ16世は、画家をローマに送り込み、古典を学ばせて、愛国心を高めさせる歴史画を描かせた。

ダビットもその使者としてローマに派遣される。

「古典が僕を誘惑することはないだろう」

と豪語していたのに、大いに心を動かされ、明暗法や、瞬間を鮮明に切り取ることで、人物を鮮やかに引き立たせる手法を手に入れていった。

また、波乱の人生の末、後世にナポレオンの肖像を描くことになる。

歴史に名を残す画家というのは、時代の中心人物に必ず見つけられ、その肖像画を描く運命なのだと思わされた。

ナポレオンは、「肖像画が自分に似ているかどうかは重要でない。そこに偉人が表現されているかどうかが問題だ」と語り、ダビットは、確か5枚くらいのナポレオンの肖像(同じ構図、顔はビミョーに違う)を描いたのだという。

この番組で学んだことは2つ。

昔の作品から、自分に不足している部分を自らの絵に引き込む独習能力。

名画を見て回れば良いということではない。

何故、自分の正面にある作品が名画で、今自分が描いている作品が、名画に成りえないのか。何が不足しているのか、それを、どう名画に仕立て直すのか。

それを考えながら、名画を見れば、自分の作品も良くなってゆくということである。

もう一つは、優れた画家は、世の中にはそんなに多くないということを学ぶ。

優れた画家に、自分の肖像を描いてもらえば、自分の名は、何百年まで先も肖像画ごと歴史に名を残すことができるということになる。

サインなどなくても、ダビットの絵は、画家の名ごと、ナポレオン展とともに世界中を闊歩する。

別のテレビ番組では、イラストレーターの安西水丸さんが出演。

彼は番組の中で、「他人と同じような絵ではいけない。一番あるのは、自分の作風を持たなくてはいけない。イラストレーターとしては、パっと見た瞬間、線でも、形の捉え方でも、その人独特のものを持たなくてはならない。」

と話してくださった。

心が引き締まった。

この番組は、彼が身近に置いている絵を中心に、作品作りのポリシーなどを作家先生がお話してくださる番組であった。

安西先生は、モディリアーニの絵を身近に置いていて、「自分の目にモディリアーニの絵が触れて良かった。絵は自分の感性で描きなさい。」

と締めくくってくださった。

安西先生も、モディリアーニの絵を通して、作品作りの本質を学んで行った方なのだと思った。

学んだことは、作家というのは、独自の世界を持たなければならないということであり、モディリアーニのパクリ品を作るということではない。念のため。

その後、ダリの番組を見る。

人妻だったガラと衝撃的な出会いを果たし結婚。

ダリの才能や、創作活動を引き出し、世に出した妻であった。

ダリは、「絵を描くことは、自らの存在を確認することである」と語り、ガラはよき理解者であった。

ガラの存在無くしては、ダリはダリに成り得なかった。とダリは語っていた。

アタシが一番驚いたのは、ガラは読書家で、ダリが絵を描いている間、横で、科学とか物理の本なんかを読み聞かせたというのだ。

なるほどねぇ。

ノウミソや、耳などの、絵画制作中は空きのある機能を利用して、情報を送り込み続けたということのよう。

ガラの死後、ダリは絵を描かなかったという話も有名。

正確には、描き進めることもできないほど、精神的に消耗していたのだと思う。

アメリカに渡り、ダリは、奇抜なヒゲを作り、雑誌表紙に出演したり、シュールレアリズムの夜と題した仮装パーティーを開いたりした。

自らが広告塔となり、ダリ自身の知名度を大衆に広げて行ったのだそうだ。

そうして、そういった全てを裏でプロデュースしていたのが、ガラということのよう。

例えば、広告出演は250,000ドル、本の挿絵は500ドル、雑誌表紙出演は600ドルというように、当時としては大金を稼ぎ出し、美術家などからは批評を浴びていた。

金の亡者とか、なんとか、そういう話のようである。

商売なのであれば、稼いだほうが勝ちである。

優れた作品に、金を出そうという金持ちだって、いくらでもいるのである。

彼が表紙となれば、本だって、それ以上に売れるのだから、出版社だって、依頼したのだと思う。

もし、出演費より、売上げが下回るのであれば、誰も彼を使ったりしない。

そういう事実もあったはずなのだ。

この番組は、作家のパフォーマンスということについて考えさせられた。

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