◆◆◆ 499 ★ 来客 ◆◆◆

2005.9.13

Hanaさんが、アトリエを訪ねてくださる。

彼女も我流で絵を続けている方で、美しく、まとまりのある絵を描く画家さんである。

正確に言えば、アタシには一生描けないだろう格調高い作品で、その風景とか静物はどこまでも美しい。

お忙しいのに、六ヒルを延期して、アトリエに来てくださるなんて、本当にありがとうございました。

彼女は、弁当を持参するとメールをくれ、アタシは、ケーキを用意して待つ。

どなたかが作ってくださった弁当を食べるチャンスは滅多にないからである。

吉野家前で彼女をピックアップし、あとりえへ。

絵にグルリと囲まれた空間は、本当に異様な空間であり、彼女は、シゲシゲとアタシの絵を眺めるのであった。

アタシは、昨日描いた、カラーインクの作品を見ていただいたり、放哉の油彩やら、折りたたみ式カンバスなどを次々と見ていただく。

多忙な彼女は、遠くから来たということもアリ、弁当とアタシが準備したケーキを食べたらもう、帰らなくてはならない時間となっていた。

許された時間というのは、短いものである。

彼女はヒマワリの絵を買いたいと申し出るが、一枚は大きすぎ、もう一枚は、バリ等の適当なサイズのカンバスに描かれており、額代がお高いということで決断には至らなかった。

アタシは、「花の絵なんか買っちゃダメだよ。ヒマワリの絵くらい、自分で描けるよ。絶対に。それにさ、アタシの絵は、人物に特徴があるんだからさ」

などといい、乾燥棚にあった、花帽子の女を取り出してくる。

F3ということもあり、破格ということもあり彼女は気に入ったようだった。

結構イイ絵だったので、もう少し高くてもいいかなと思いながらも、また描けるしなと、思い直したりもする。

主婦のヘソクリというのは限られているし、何十万円もの品になってしまえば、一生買われることもなくなってしまうのだ。

時給850円のスーパー価格で近所にバイトに出るよりも、安価でも、油彩に仕立てて、それを販売する方が、アタシも買うほうも、よっぽどニコニコなのである。

お客様が買える価格でなければ、その商品は、売れることがないということである。

そうして、展覧会でも開こうと思いつつ、描き貯めている作品は、一番良いのだけが売れてしまい、展覧会を開くのが、また先になってしまう。

これで良いのだと思う。

画廊で個展を開くと、売価が単純に値上がりするだけで、私に入ってくる収入は、自力で販売するのと大差ないからである。

出来が良い絵は売れるのだから、出来が悪い絵は、出来が良い絵に昇華させてゆけばよいのである。

それが、画家の仕事ということだ。

良い絵と悪い絵が出来るのは、画家としての力が安定していないからに他ならず、まだまだ、精進しがいがあるあるということでもある。

頑張るぜ。

こんな作品は、ブックカバーになるとカワイイぜ。

安すぎる絵は不安だと、アナタは思うかもしれない。

そうして、絵を沢山見るようになる。

驚くべき値段で販売されている展覧会をいくつも歩いているうちに、絵の値段というのは、益々解らなくなって行く。

しかし、相場というのが掴めてくると、「この絵の、この値段は、安い」ということは見逃さなくなる。

それが、経験というものなのである。

今日も、良い版画と出合えたが、12万円もしたので買えなかった。

2万円なら買っていたかもしれない。

3万円では買わない。

そういう、微妙な所に購買決断というのは置かれているのである。

版画の原価など、そんなにかかっちゃいないのだ。2万円でガンガン売ればいいのにと、内心思いながら、その版画をいつまでも眺めていた。