◆◆◆ 銅版画の下準備-3 ◆◆◆

テーパーして、グランドの定着を高めます。それから描画します。

テーパーというのは、銅板の上に広げたグランドを、一度、熱で溶かして、もう一度乾かすことです。

この作業をすると、グランドの中にあった蝋の成分などが溶けて、銅板に、グランドがシッカリと定着します。

この作業を省略すると、腐食の間に、線がボロボロになり、美しい版画が出来上がらないのです。

オジャラは、家庭用のホットプレートを利用しています。

火を使わないので安全だからです。

バリ島では、ニッパで銅板を挟み、ろうそくを使って、黒い面を直接温めていました。

ろうそくに直接当てて、銅板全体の色がキャラメル上になったら、さっと引き上げます。

やりすぎると、グランド塗りなおしになります。版全体の色が変わったら、さっと引き上げるのがコツです。

専用のろうそくも売っていますけど、オジャラは、それは高くて買えません。

画面がマックロになって、細かい線が見えやすくなります。細密画の方は、テーパー用のろうそく、買う方がいいかもしれません。

テーパーのコツ

一度乾燥していたグランドは、熱を加えると、溶けて、また、液体に戻ります。

全体の色がうっすらと和らいで、キャラメル色になったら、版を熱から離します。

短時間で終了します。

あまりやりすぎると、折角均一に広げたグランドが、ブチブチと分離し始めて、ムラになってしまいます。

そうするとどうなるのかというと、グランドを塗るところからやり直しになります。

灯油をぶっかけて、ボロ布でグランドを取り去り、もう一度、グランドを塗りなおすところからスタートです。

でも、グランドを薄く、ムラなく引けないと、エッチングは、80%失敗します。

大切なんです。

ここだけでも、誰かに実演してもらって、実際の薄さとか、見せてもらうと、銅版画は、自分で作れるようになります。

アタシの場合、ついでに、エッジに、セロテープも貼ります。

オジャラの版画は、ディープエッヂングと呼ばれ、腐食時間がとても長いのです。

最初に作ったプレートマークは、長時間の腐食でボロボロになってしまいます。

そんなんで、端を3ミリ位、セロテープで保護しています。

これだけでも、美しいプレートマークが保たれます。

版が完成した後でプレートマークを作る方も多いのですが、オジャラは、雑なので、そのときに、版を傷つけてしまい、版がダメになってしまうので、最初にプレートマークを作っているのです。

腐食時間が短い方は、とりあえず、セロテープは要らないです。

腐食の後で、セロテープを取る作業は、メチャクチャ面倒です。

銅板に、線を描いてゆきます。

ニードルの場合、面は作れないです。

あくまでも、線と点のみで描画しましょう。

面の作り方は、他の技法の方が、美しく出ます。

出来上がったときのコントラストを考えて作るのがポイントです。

描画が完成したら、腐食に入ります。

アタシは、銅板に、いきなり描きますけど、失敗したくないアナタは、トレッシングペーパーを使って下絵を、転写しましょう。

トレッシングペーパーに、エンピツで線を描き、エンピツの面を銅板に置き、プレス機でプレスすると、あっという間に、転写できるらしいです。

液につけてみます。

初心者は、黒い面を下に向けて、だいたい2時間を目安に腐食します。

第二塩化鉄で、銅板を腐食するときに、銅の部分は、細かい粉になりながら、腐食されてゆきます。

ですから、上に向けたままだと、この粉が、溝に詰まって、上手く腐食できないのです。

繊細な作品で、面を傷つけたくない場合は、黒い面を上にして腐食します。

時々(一時間に3-4回)、液をそっと揺らし、溝に入った銅を、下に落としてあげます。

オジャラは、豆腐用のタッパーというのを使っています。豆腐を引き出す道具が入っていて、銅板を引き上げるのに、丁度いいからです。

100円ショップで買いました。

この液は、強酸性なので、手についたりしたら、すぐに洗い流しましょう。

辺りにあるものは全てサビてしまいますので、

大切なオーディオ機器やバソコンなどとは別の場所で腐食しましょう。

オジャラは、外で腐食しています。(ホントウ)

腐食液に関して

腐食液は、密閉できる、プラスチックの容器に入れて、そのまま保管しています。

いつでも腐食ができて、とても便利です。

腐食を繰り返していると、液が弱くなり、腐食に時間がかかるようになります。

そうしたら、注ぎ足して使っています。

それでも、もう、腐食できなくなった場合には、

処分しなければなりません。

酸性なので、アルカリ性の石灰で中和して、固めて、ゴミとして捨てるというのが正しいみたいです。

オジャラは、まだ捨ててませんけど、もうそろそろ、捨てようと思っています。ドキドキするわぁ。

ケムリとか出ちゃうのかしら?

そんなこんなで、その辺、どうか、ご自分でも調べてみてください。

そのまま流したりすると、下水の管など、金属部分が錆びてしまい、修理に大金が必要になります。アナタの家だから、構わないっすけどね。どうぞ、お気をつけて。

見え辛いっすけど、完成した版です。

グランドは、完全に取り除きます。

最初の一枚目の腐食は、2時間程度にします。

その後、その線の具合を見て、何分にするか決めましょう。

太い線が必要なら、5時間にすればいいし、もっと、繊細なタッチでいきたいなら、1時間にするとか、そんな感じです。

センセイは、90分以上は腐食しないとおっしゃってました。アタシは、最低でも4-5時間は腐食します。

新しい液なら、1時間程度で十分です。

腐食液から引き出した銅板は、灯油をふりかけて、ボロ布で、グランドを取り去ります。

おっと、ここで、しょうゆを銅板にかけて、溝の中に、丁寧にしょうゆを入れてゆきます。

フツーの醤油でいいです。

酸化している銅板を、中和させるためです。

必ず必要な作業です。

これをやらないと、見る見るロクショウが湧いてきて、版が緑色になってきます。

素早く、この時点で、中和させておきましょう。

これで、版は完成です。

グランドと、線の関係。

一旦描画したグランドを、剥がしてしまったら、銅版画は、そこで終了と思ってください。

線をもっと太くしたいと思ったら、この時点で、もう一度腐食液に漬けるという選択をしなければなりません。

一旦、水洗いして、細そうな線を、ニードルで加筆して、太くしたり、点描を加えたりもできます。

もし、一部は、腐食をストップしたいけど、あとは、もっと太くしたいという場合、ストップしたいところだけ、ニスで止めて、その部分の腐食だけを進まないようにします。

モチロン、グランドを一旦剥がして、もう一度作り直すということは、物理的には可能です。

でも、何百時間もかかります。

線が十分で無い場合、グランドを剥がしてしまった後、どういう方法が残されているのかといえば、

ドライポイントで、線を太く加筆するという方法、面を追加するという方法、グランドを塗りなおして、全く新しい線を追加するという方法しかないのです。

アタシ的には、グランドを剥がしたら、その線は、もう追加できないと考えています。版の完成度が落ちてしまうからです。

腐食を続けるのか、ストップするのか。

この決断が、銅版画にとって、最も大切です。

何枚も作らないと、グランドを塗ってある、腐食の感じは、解らないです。

最初の一枚から、腐食の時間、刷り上りをチェックして、自分のデータを積み上げてゆくという作業になるということです。

いよいよ、刷りに入ります。楽しみだわあ。